雪が降って白くなった


 部屋の中。白い。
 光が差す窓の前で、彼女が振り返る。
 逆光で顔は見えない。

 「何を、考えていたの?」

 彼女が僕に問いかける。

 「昔のこと、考えてたんでしょ」

 僕はあいまいにうなずく。

 きっと今が、"昔のこと"なのだ。
 いつかそうなるのだ。
 彼女の顔も、いつか見えてくるのだ。
 きっと。
 そして別の誰かの顔は見えなくなるのだ。
 きっと。
 忘れていくのだ。
 私は忘れたいのだ。

 きっと。

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