To be, or not to be.
二人きりでライブを観た。
僕の隣にはあの人がいた。
機材の入れ替え時に、暗い中、二人で話をする。
彼女は彼氏の話をする。
映画を観に行った話をさりげなくする。
彼女はまだ彼と続いているという事実を、否応なく、僕は知る。
僕の気は滅入る。表には出さない。
笑顔で会話を続ける。
彼女は僕の気持ちを知っている。おそらく。
僕は考える。
彼女はなぜ今僕の隣にいるのか。
なぜ彼氏の話をするのか。
僕のことをどう思っているのか。
何も聞けなかった。何一つ。
帰り道、別れた後に、
気が滅入ったことを暗喩するメールを、送ってしまった。
返事は素っ気無かった。きわめて事務的な内容。
僕は聞きたいことを問うていないのだから、
当然彼女はそれには応えていない。
結局、何も変わっていない。
+ + +
二人きりで会うのは何年ぶりだったろう。
僕がかつて気持ちを伝えて以来だった。
離れてしまって、連絡すらとれなくなっていたときに、
彼女が人づてに、僕にアドレスを教えてきた。
それは何のためだったのだろう。
今日、会わない方がよかったのだろうか。
そうは思わない、思う、どちらだろう。
自分の気持ちすらよく分からない。
前進してるのか後退しているのか、分からない。
いや、
こうやって思い悩むということは、
僕の気持ちは分かりきっているはずだ。
するべきことは、一つだと思う。
たとえ結果が望むものでなかったとしても、
それは元に戻るだけ。
連絡すら取れなかった、あのときに戻るだけ。
ただ、今ではない。僕がするべきことをするのは。
そのタイミングは、明確に決めてある。前から。
そうだ、彼女に相手がいようと、いまいと、
そうするつもりだったじゃないか。
だから僕はそうするだろう。
もう一度、伝えるだろう。はっきりと。
+ + +
今は罰を受けているのかもしれない、などと考える。
こうやって、僕は何がしかの痛みを受けているように思えるけれど、
こんな痛みは、僕が、僕の近くにいた女性を裏切ったときに、
彼女が感じた痛みに比べれば、何ほどのものだろう。
そうやって、前を向く。
僕は明日からも、働いて、そして生きていかねばならない。
沈んだままでいるのは、望まない。
メールを書こう。そうしよう。