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『ひかりのまち』

ひかりのまち
浅野 いにお / 小学館
スコア選択: ★★★★




『ひかりのまち』は“浅野いにお”さんの漫画。「さん」づけで呼んだけれども、僕よりも年下の浅野さん。1980年生まれの2001年デビュー。『ひかりのまち』は、2つめの単行本化作品。

もともと僕が浅野さんを知ったのは、『クイックジャパン』に連載している「虹ヶ原/ホログラフ」を読んでからだった。過去と未来を話が行ったり来たりするので、続けて読んでないと話が分りにくくなってしまうのだが、幸運にも僕は第1話から読むことができたのだった。そこにある何かが僕を惹いた。どこか浦沢直樹さんにも似た、ライトでありつつも細かい描写。100%幸せに見えないが故に、どこかにいそうな、けれど漫画的であるから安心感がある、ほのかなリアリティを感じさせるキャラクター。そしてサイコな展開・・・。

ま、それは置いといて。

その、気になる浅野さんの作品だから、『ひかりのまち』を読んでみたかった。『素晴らしい世界』はまだ読めていないんだけれど。作風は、上記のものとあまり変わらん印象。短編集であるが、日常を生きる平凡人の心のグレイゾーンから、ダークサイドに踏み込んでしまった少年・青年の話など、どこか悲哀を滲ませる話が多い。話が犯罪絡みや血なまぐさいものである場合には、ミステリー的要素がスパイスというか隠し味というか、読み手の好奇心をかきたてる要因となっているのは間違いない。

賛否いろいろ言われることもある浅野さんの作品だけれど、僕は、好きだな。「ひかりのまち」に住む人たちの日常を扱いながらも、それはちょっと日常からずれていて、どこか浮世離れしているようにも思える。だからどこかファンタジックであるんだけれど、「自殺の見届け屋」とかね、ブォオンと心を揺さぶる黒い要素が、ときたま出てきて、この夢見がちな、ノスタルジアを孕んだ狂気、みたいな印象が好きなんです。一頃前の、北野武監督の映画とか、あの辺りに近い空気、僕の中では。ブルーで、シーンとしてて、そこに突発的な赤や黒(暴力描写)が舞い降りて、日常の裏にある狂気が顔を覗かせる、みたいな。けれど全体ではやっぱりブルー。

話はそんなばっかじゃないけどね。「なんでもねえじゃねえかー」って話もある。ハハ。まあ興味ある方は読んでみてくんさい。全1巻、小学館より出ております。

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