GANTZ 第21巻 - 命はチープ

GANTZ 21 (21)
奥 浩哉 / / 集英社
スコア選択: ★★★★




■GANTZの第21巻、僕はハッとさせられてしまった。これまで考えていた枠組みに、ガンツメンバー自身から、疑問が提示された。これまで彼らは、ミッションにおいて、際際(きわきわ)の戦いを潜り抜けて100点を獲得することで、ガンツ(玉男)に関係して命を落としてきた人間を、生き返らせてきた。それはいわば勝者への、褒美であり、そこに疑問を差し挟む余地はなかった。少なくとも僕の頭には。■今回のミッションでは、舞台が初めて大阪に移動する。関西である。そこに現れたのは、コレまでに見たことのない、ガンツメンバーたちだった。いうなれば、関西組。彼らの戦い方は、関東組(つまり今レイカや加藤がいるグループ)のそれとは大きく異なっていた。関東組よりもはるかに多くの戦いを潜り抜けてきたと思われる、彼ら関西組の道徳的観念は、麻痺しているようだった。あるいは元からそういう素養があったのかもしれないが。ドラッグでキマりまくった状態で、ターゲットである星人を惨殺することで、彼らは爽快感を得ているようであった。なんともスカッとしているようであった。挙句の果てには、女の星人を犯しまくっている。輪姦している。そういったやり方は、彼らが戦いを繰り返す中で、身につけたものなのかもしれない。クスリで朦朧としているせいもあるかもしれないが、彼らはたとえ星人に殺されそうな場合でも、焦らない。「あれ」ってな具合で、体を切断されて、死んでいく。何かが欠如している。なんせ殺されたって、メンバーの誰かに点数稼いでもらって、生き返らせてもらえばいいだけなのだから、およそ人間が持っているであろう、生死に関する"尊い"という観念は崩れていくのだろう(それと関連していえば、なぜ関西組は100点稼いで"日常に戻る"という選択をしないのであろうか。バイオレンスを極めるこのガンツワールド、快楽の世界に中毒なのであろうか)。■そんなRPG的に生死が繰り返される世界で、前巻で命を落とした玄野を何とか(100点稼いで)蘇らせようとする加藤に、関東組のサカタが、こんな言葉を発する―


『やめとけッって もう人間を生き返らすのは。
何度も死んだり生き返ったり、
人間 そんなチープなもんでいいのか?』


―ハッとしてしまった。ガンツワールドの根幹にある「何度でも生き返ることが出来る」=「生死の区別がない」という設定を、彼の言葉はぶち壊そうとしている。と同時に、読者側に存在しいてる、「死んでも生き返ることが出来る」=「星人との戦いに緊迫感がない」というタルさを、払拭しようとしている。もちろんサカタの言葉があったからといって、今後誰も生き返らせない、というわけではないのだろうが。少なくとも、サカタの言葉は、僕の中にあったタルさを、いくらか軽減したことは確かだ。こういう視点が出てくるとは思っていなかった。巻末で加藤は苦悩するが、果たして・・・。このまま倫理観を問うような形で物語りが進むわけではないのだろうが、この新たな視点の登場に、また先が楽しみになった。■しかしながら、この巻では大量の妖怪型星人が出現して、その姿は一般人に可視である点、そして多くの星人が関西組によって殺戮され、その死骸が道端に溢れている点、これらの点について考えてみると、このあと、どう話がまとまるのだろうか。現実世界はこの事態にどういう反応を見せるのだろうか。オニ星人編という前例があるだけに、あのときよりも、もっともっと大きなリアクションが返ってきていいはずだろうから、そこも今後の見所というか、個人的に注意しておきたい点だ。

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