セバスチャン・フィツェック - 『サイコブレイカー』
サイコスリラー、ですか。
実験と称して、とあるレポートを読まされる学生たち。
そのレポートというのが、読者の読む本文となっている。
ときおりレポートが中断して、実験場面、
というか、教授と学生のやり取りが描かれる。
そのレポートの内容というのは、
ある病院で発生した奇怪な事件の顛末。
女性ばかり狙って精神を破壊、つまりは
外界とコミュニケーションする能力を奪ってしまう、サイコブレイカー。
吹雪の夜に、サイコブレイカーと共に病院に閉じ込められた、
病院職員や患者たち。やがて、一人、また一人と消えていく・・・。
果たしてサイコブレイカーは誰なのか、そして動機は何なのかという点と、
記憶をなくしているカスパルは何者なのかという点、
そして頻発する「恐怖の瞬間まであと○○時間」という注意書きに導かれる、
「果たしてその瞬間何が起きるのか?」という緊迫感が、物語を引っ張る。
だが、それだけでは終わらない。
この実験の目的が何であるのかという点だ。
そこが最大の見所、であるのだが、
これは物語中で起こる大ドンデン返し、ではなく、
われわれ読者に仕掛けられているものなので、
正直あんまりビックリしない。
そのせいで★4つになっています。
ページの途中に、物語中で言及される
メールアドレスを記した実際の付箋がはさんであったり(ビックリした!)、
レポート部分と、それ以外の部分で、ページ数が区別されていたり、
序盤でいきなり犯人にたどりつく伏線が張られていたりと、
細かいところまで凝っていて、エンターテイメント精神が爆発しています。
一度読んで済ませるよりも、
二度目にここがこうだからこうでこうで、
そうすると、なるほど、こうじゃないと辻褄が合わんなと、
パズルのピースをはめるように読んでいくのも、
面白いかもしれません。
もっとこういう展開だったらなあ、という思いもありますが、
それを書くとネタバレになるので割愛。
なんか余韻を残す不思議な作品だなあ。
実験の真の目的というやつが、その感覚を生んでいるのかな。
結局最後のなぞなぞ、答えが分からなかったので、以下のページを訪れた私(笑)―
柏書房 - 『サイコブレイカー』書籍案内ページ
by BUG_life_wave
| 2009-10-05 21:42
| 本