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市川春子 - 『虫と歌 市川春子作品集』

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)

市川 春子 / 講談社

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 どっかで"「星の恋人」がいい、単行本化希望"、
 というような文を読んでからずっと気にしていて、
 そのくせ忘れていたのだが、
 ここにきてQJやwebDICE!で取り上げられて、思い出しました(笑)。

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 昼だか夜だか分からない不思議なトーン使い。
 明るさと暗さが同居する。
 話の筋はちょっと書けない。
 ファンタジーという括りでいいかしら。 

 絵はダルい感じでソフトなのだけれど、
 よく考えると、話はけっこうグロテスクな。
 でもセンチメンタルでノスタルジックな部分もあり。

 構図とか間とか台詞(なんか独特の台詞回し)とか、
 難しいことは考えてる時間も素養もないので割愛で。
 「日下兄妹」が一番分かりやすいですかね。
 肩を壊して野球を諦めた主人公の元に現れる、
 ネジから生まれた女の子。二人の奇妙な共同生活。
 なんの論理的説明もなし。まあ、あったら余計っていうか。
 絵はふわふわしてるんだけど、
 ドラマがあって、それは必ずある種の別れに向かっていく。
 失望をもたらすものではないけれど。

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 個人の生というやつは、客観的に見たら滑稽で、"?"かもしれないが、
 それでも主観的には、当の本人としては、
 その状況を精一杯楽しむことで(上を目指さないということではない)、
 幸せを感じることができるのだという、そんな流れを感じた。
 確かに人間は"人間"であるけれど、
 何か"大いなるもの"の一部でしかないのだと、
 だから自分につながる"すべて"の関係性に気づくことで、
 より幸福になれるのではないか。そんなふうに思う。

 高野文子さんとの類似性の指摘が避けられないようだけど、
 まあ私はちょっと読んでないので、言及することができない。
 相当影響下にはあるみたいですね。
 そうでなければここまで指摘されないでしょう。

 どこが新しいとかっても言えないんだけど、でも不思議な作品。

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