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夢の終わりに

僕はたまに思うことがある。夜眠れないときによく思うことだ。朝目が覚めたら、僕はぜんぜん知らない場所で寝ていて、今までの人生は夢だったのだと、誰かが教えてくれるんじゃないかとか、あるいは僕が死んだ時、そこで初めて別世界で眠っている僕が目を覚まして、同じように誰かが、今までの人生は夢だったんだよと、教えてくれるんじゃないか、そんなことを考える。そのイメージはこうだ――

僕が目を覚ましたとき、目の前にはシャボン玉のようなものが浮かんでいる。透明でフワフワしていて、大きさは握り拳くらいだ。そいつは空中に静止しているわけではなくて、わずかに前後左右にフラフラと揺れている。シャボン玉の中身は細い管がいくつも見える。ウィンドウチャイムを形作っている鉄管をでたらめに組み合わせた感じだ。僕が見ていると、そのシャボン玉の表面に細かい穴がプツプツと空いて、そこからそれぞれに異なった匂いが漂ってくる。なぜか僕の嗅覚はそれらの匂いを的確に嗅ぎ分けることが出来て、同時に、その各匂いと、2種類以上の匂いの組み合わせが、ある種の言語をなしていることがわかる。けれどその匂いはけして明確な言葉ではなくて、単なるイメージのようなものとして、僕には受け取られるのである。

そのシャボン玉じみたヤツは僕に教えてくれるのだ。君が今まで体験してきた人生はすべて夢だったのだよと。そして君が望むなら、君は今から人間として生きることになり、今見てきた夢とそっくり同じ人生を送ることになると。

望めば人間に、ということは今の俺はなんなのだと思い自分の体をみると、僕もまたシャボン玉である。どうやって「見」ているのか分らないが、僕にはそれが見える。ただし中身は空っぽである。鉄管のようなものは入っていない。

今まで見てきたのとそっくり同じ人生・・・それってどうなのだろう・・・望んでまでまた送りたいほどのものであろうか。つらいことも楽しいこともあったが、つらいことの方が多かった気もする。もう一度送りたい・・・?

夢の終わりには、答えを出さねばならない。僕はいったいどちらを選ぶだろう――

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なあんてな、その前に今をしっかり生きろって!!

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