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8の殺人

8の殺人
我孫子 武丸 / 講談社
スコア選択: ★★★





■我孫子武丸(あびこ・たけまる)氏の長編推理デビュー作だ。ということで、何をいまさら・・・な感じがプンプンしますかな。でもコレ刊行されたの1989年てことは、えーと、もう10ウン年前の作品なのか!! はあ・・・。■我孫子氏といえば、傑作サウンドノベル『かまいたちの夜』のシナリオを手がけたことで、一躍名を馳せた、あの人である。あの作品がメガヒットを記録したのは、サウンドノベルという、当時革新的だったスタイル(見る小説とでもいうか)に依っていただけではなく、我孫子氏の手抜き無しの本格志向(島田荘司氏の言葉を借りれば、物語がどんな体裁をとっていても、『根底に「トリック」がある』ということだ)が炸裂していたことも大きな要因のひとつに違いない。■そしてこの作品も、そのように、というか、いやまったくもってトリックものである。■8の字形の屋敷で起きた不可思議な殺人事件に挑む、速水警部補、および推理マニアのその弟と妹の、楽しげな話である。ホントはここに細かく事件の状況を書いて、(このブログの)読み手の好奇心を喚起したいのだけど、止めておこうか。第一の殺人のトリックは途中で分かってしまったが、さすがに(?)第二の殺人の真相は分からなかった。し、なにより犯人もわからなかった・・・。■まあ、かなりライトな作風なので、サクサク読めてしまう。登場人物たちが実にイキイキとしているので、まるで漫画を読んでいるようである。(小説と漫画の)どっちがどうだとか、そういうことではない。でもそんな中にあっても、推理小説研究会にも所属していた作者のもつ、「推理小説」への愛が、いたるところで染み出しており(特に第七章)、このライトな作風が決して底の浅さから来る「逃げ」ではないことが分かる。むしろ逆に、こういった本格志向のトリックものを、こういった作風で書くことは難しいのではなかろうか。そうも思う。■僕は決して我孫子氏のファンではないのだが、氏の作品はいくつか読んでいる。中でも一際インパクトの強い『殺戮にいたる病』と、本作の間にある、その空気の違いにはただ驚きである。なぜこんなに違うのだろう。■あ、話が逸れた。とにかく、サクサク読める、堅苦しくない、本格もの、ということで・・・気になる人は読んでみればいいじゃない。僕はもうちょっと重い方が好きだけど。

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