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夜の底にて

「・・・日暮さん、僕は何もない場所へ行きたい。」
「・・・ないよ。そんな所。」
「でも僕はここにもういたくないんだ。」

「『虹ヶ原/ホログラフ』 第9話より」


◆◆◆学生時代に心が(少し)詰まった。研究室で独り泣いた翌日だったか、僕はフラリと常磐線(当時は水戸住まいだった)に乗った。行く先は決めてなかった。ただ、ここ(其処)ではないどこかに行きたかった。常磐線、乗ったことある人は分ると思うが、景色は田舎だ。上り方向で言うなら、上野に着くまでは大分パッとしない景色がつづく。
暑い時期だった。僕はTシャツにジーンズ、持ち物はサイフだけで、名前だけ知っている、そして一回も降りたことのない、そんな駅で降りた。目立つものは何もなかった。僕はあてもなく歩いた。大きな道路には車はほとんど走っていなくて、道路沿いに店がかたまっている箇所がたまにあるが、小さい店はシャッターを下ろしているか、つぶれているか、どちらかだった。スーパーは、やっていた。大分歩いた頃に、高校を見つけたが、回りに何もない。草むらと川くらいしかないこの近辺で、彼らはどうやって遊ぶのだろう、自転車に乗った高校生を見るたびに、僕は思った。
駅の反対側は、(おそらく)国道が走っていた。国道沿いに広がる緑の景色、それは風にゆれていて、僕は歩道を歩きながら、その音に耳を澄まし、そして見惚れた。でも人がほとんど歩いてなくて、通る車がみんな、独りぼっちでそんなとこを歩いている僕を見ているような気がして、僕はいたたまれなくなって、わき道へそれてしまった。
誰かの敷地なんだろうか、小さな竹林があって、僕はその下をくぐりながら、日陰で涼み、葉の間からこぼれる日光をありがたそうに受け止めた。名も知らぬ小学校の脇を通りながらグランドを眺め、自分の出身校をそこに重ねる。
駅前には小さな和菓子屋があり、車庫が木造のタクシー会社があり、観光案内所があり、なんだかいかつい造りのラーメン屋があった。女子高生の数人がラーメン屋に消えるのを見て、なるほどここがある種「憩いの場」になっているのかと、僕は納得した。放置自転車を横目に線路沿いを歩く僕の目の前を、男女で自転車に二人乗りをした高校生が、颯爽と通り過ぎる。僕はその場所を二回巡った。彼らにもう一度会った。
近づく夏祭りを知らせる提灯やノボリが風に揺れるのを眺めながら、僕は夕刻のホームで下り列車を待った。再び電車に乗って下る僕の心は、いくらか晴れていた・・・ように思う――◆◆◆

今また、そんなことをしたくなってます。まーできないけれど。色いろ聞いてくる人が周りにいすぎるし、いちいち説明するエネルギーがきっと今の僕にはないのです。ハアア。
おやすみなさい。

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